拝啓
私は、昨日6月26日に貴連盟主催の航空自衛隊春日基地の研修に参加させていただきました。その際、解散時の挨拶で感想文を望む旨のお話がありましたので、記憶の新しいうちに愚文を送付させていただきます。
まず、第一印象として現場で感じましたのは、基地内の隊員諸氏の顔つきを見て、「職業は顔をつくる」と言われているのは本当だということでございました。私の職場は、若い世代を客層に狙いを定めたところですので、当然のことながら、若い人たちが中心となって働いております。その私の職場の若者と、基地内での若者の間には、その彼らのもつ雰囲気の中に明らかな違いを感じました。それは「張り」と「元気」の有無です。私には、私の職場の若者が始業前や裏で見せる彼らの本音の顔の中に一種の疲れを常に見ております。
それは恐らく彼らの仕事の中に「誇り」や「やり甲斐」といった自らの心を奮い立たせるものを見いだせないからでしょう。対照的に基地で出会った隊員の若者達には「大切な仕事をやっている」という誇りと納得があると感じました。
空港で、ヘリコプターや練習機の説明をしていただいたパイロットや整備士の言葉や態度に「落ちつき」と「切れ」を感じたのは、私一人ではなかったのではないでしょうか。それはビデオの中で紹介されていた「自分の仕事が大切なものであり必要なものとして頼りにされている」という自覚からくるものであろうと思います。
また、会社員の私からは、自衛隊は明らかに実行組織として、現場の人間が活力を持っている点が、羨ましくもあり、官僚化しつつあると言われながらも、まだまだ大丈夫であろうと思いました。民間では、ここ10数年来、現場での卓越した専門家になろうという若者が、めっきりと減少し、ネクタイをしめて管理部門へと志向するものが多くなり、組織が明らかに中央官庁型への体質を強めており、これが、長期的には好ましいとは思われず、小才と要領のいい者が有利な状態となり、現象的にも、意識や心理的にも弊害を、ジワジワとかもし出しているのだと思います。それは現実論より観念論に走りやすく、口は立っても腕が立たないという好ましくないケースが増えています。
次に、福岡という地に住んでいても、その福岡のもつ歴史や文化の足跡、経緯、そしてそれにまつわる物語というのを意外と知らないものだということを実感致しました。
移動通信隊見学のあと、広報の江口一尉が、紹介された、アメリカ軍が使用していた際の施設として残っている射撃場のコンクリート壁は、一見何でもないようですが、私には歴史を肌で感じさせられる一コマでした。また、江口一尉のブリーフィングによって、基地の規模を視覚的に示され、また、その他の現状説明により、戦略空間といったものも実感できました。それは机上の知識にすぎなかったものが、専門家の肉声によって実感的な感覚を帯び、ついては知識欲旺盛な20代、30代の若者にも教養の一環として附することはできないものだろうかという印象を持ちました。
と言いますのも、私共戦後生まれは、学校教育では日教組による罪悪史観、反軍思想による刷り込み教育を受けますので、それから脱却して正常な常識と教養を有するまでには相当の自己啓発を必要とするように思います。その自己啓発や「ちょっと違うのではないか」といった疑問は、海外での生活を経験するなどの生活環境の変化を味わうか、「教えられている自国の側面」を知らしめることによって覚醒するものだと思います。現在社会一般的に自衛隊への関心が薄い中でも、自衛隊への興味や親しみを持つ若者も少なくないでしょう。そうした若い人々へ知らしめる活動を考えられる必要もあるのではないだろうかと思った次第です。
更には参加された方々も、さすがに関心の高い方々でしたので、数々の質問も、それぞれ興味のある事柄を尋ねておられ、隊員とのやり取りも活発でございました。そのような質疑のやり取りを見つつ、私が感じたことでもあり、また、実現可能なら是非叶えていただきたい希望でもあるのですが、自衛隊関係者の方に、もう少し、アカデミック、学術的な質問をさせて戴いて、それにお応えいただくといった研修会ができないであろうかということです。そのような機会があれば是非、会社の若い後輩を誘って参加してみたいと思います。アカデミズム的な性格を有する研修には若い世代も意欲的だろうと思います。
私は、若い頃、海外におりまして、高校のカリキュラムの中に「国防」というのが課されているのを知り、非常に驚いたことがあります。その後、日本に帰って来てからは、日本人の関心と話題が経済と文化しか取り上げないのに再び驚いたものです。まるで、隔離された別世界という気がし、大丈夫なのかと思ったものです。
最後に私も戦前教育を受けられた方々の目から見ると、気骨のない世代ですが、その私の目に映る母国日本は、明らかに健全とは言えないように思います。一介の弁護士や犯罪タレントが自治体の首長になり、またそれを深慮なく支持する国民の感覚と素養、そしてマスコミといった皮相的な堕落もさることながら、次期首相を狙おうかという野党の代表が「日本は日本人だけのものではない」と堂々と発言するなど、「この人はまともであろうか」と疑わざるを得ず、その見識に憂慮せざるを得ない自壊の可能性や謀略を心配させられます。
国政を司ろうかという要路の人間が、こうした「安全保障とはこういうものだ」「民族の独立とは何か」「国家の歴史の重みとはどういうことか」「民族の気概、誇り、そして自信とは何か」といった素養、哲学が欠落して、「友愛」とか「国連中心主義」などと言った観念的なロマンティズムに傾倒するなど、外国のリーダーにはない低能さを出して恥としないところが、日本人が感覚的平衡を失している証拠で、これは笑って済ませられることではありません。自らを認めるアイデンティティーが消滅しつつあるのかもしれません。
ましてや、世界に伍していくことが、好むと好まざるとにかかわらず、日本の宿命であろうと私は思います。その宿命をまかせられる政治家が、日本には数えられるほどにもいないのではないでしょうか。それは、政治家のみが悪いのではなく、「見る目がない」「考える力が乏しい」といった低い素養の国民にも責任はあります。ならば、国民の素養を高める機会を提供する活動を、貴連盟には期待できるのではないだろうかという印象でした。
自らの拠り所を養うと同時に、異種異論も理解できる素養を醸成できる、そのような可能性を貴連盟に望みます。
敬具
平成21年(2009年)6月27日
福岡市南区 Mさん
平成21年6月26日(金)福岡県郷友連盟は、広く一般の人々に国の安全保障に関する理解を得る一助として航空自衛隊春日基地研修会を企画し、参加を呼びかけたところ、総勢52名の参加を得て晴天下航空自衛隊装備の一部を間近に見学した。
春日基地には、航空自衛隊西部航空方面隊の司令部、警戒管制部隊の司令部と移動警戒隊などが所在し、福岡空港の片隅には方面隊司令部の用務を支援する飛行部隊と離島に対する人員物資の輸送を担当する空輸部隊が所在している。
研修は、春日基地広報館において江口広報班長からわが国の防空システムの概要、わが国周辺の航空活動と対領空侵犯措置の概況、災害派遣等の実施状況などについて説明を受けた後、移動警戒隊の主要装備について移動警戒隊長等の案内によって見学した。
午後は、大型バスで福岡空港へ移動して空港敷地内に所在する西空司令部支援飛行隊のT−4型練習機、航空救難団ヘリコプター空輸隊のCH−47J型ヘリコプターと災害派遣用資機材を見学し、途中、輸送航空団の国産C−1ジェット輸送機の定期便の離発着の様子も見ることができた。
研修の間、終始自衛隊側の案内者と研修参加者との間で熱心な質疑応答が行われ、航空自衛隊の任務・特性について理解が深められた模様である。
更に、国内線、国際線の民間旅客機の離発着を普段立ち入ることのない場所から見られ、研修参加者は盛んにカメラのシャッターを切っていた。
研修終了後日、参加者から研修参加の感想とわが郷友連盟に対する貴重な提言が寄せられた。
明治維新の大業以来 大東亜戦争までの幾多の国難に際して、身命を賭して我が国家と民族を護ってこられた英霊の皆様をお祀りする此の陸軍墓地の各石碑が、去る平成17年3月21日の福岡県西方沖地震により相当の被害を受けました。国有地の墓地の上に建立された此の石碑群の被害の修復は、国又は地方自治体等の責務と思いましたが、その気配が無く、交渉するも応じず、遂に福岡県郷友連盟をはじめ関係諸団体が相集い、石碑修復委員会を立ち上げ、広く有志の方々に協力を呼びかけた処、八百数拾人の方々に資金提供を賜りました。
早速 國松石材に工事を発注し、動いた碑柱のずれ直し等に着工し、19年秋の慰霊祭に間に合いました。然し 心配していた墓内の状況は扉の鍵を破壊して調査した結果、多くの棚板は落下破損し、英霊の骨壺も多数が落下、深さ胸までもの満水という驚くべき惨状が判明。委員一同申し訳無しと暗然と致し、直ちに修復を計画、棚板を宮崎県小林市にて楠材にて調達、御壺は一時國松石材に移送管理し、委員総出で整理・番号付け等を行い、11月に改良工事と骨壷御霊のお戻りを完了、本日落成の式典をとり行うに至りました。ここに眠られる数萬の英霊の方々には再び安らかに鎮まりまして、更に我が国が一日も早く真の姿に立ち返るように御導き御加護を賜りますよう心から祈念いたします。
平成20年12月6日
陸軍墓地石碑修復改良委員会
委員長 菅原道之