「衆議院議員選挙結果と誇りある日本再生への提言」への所感


 2009年11月28日築城基地研修の際に、福岡県郷友連盟吉田理事長から示された「衆議院議員選挙結果と誇りある日本再生への提言」を拝読し、蒙を啓かれる思いと同時に大いに共鳴を覚える点があったので、その所感を投稿する次第です。
 福岡県郷友連盟の趣旨が「誇りある日本の再生を目指す」ということには私も賛同し、その必要を感じるところです。現在の日本は、「誇り」と「尊厳」を持った国家として再生させなくてはいけないと思われるほど、外には侮りの振る舞いを受け、内にはその世相に混迷を極め、威厳のかけらもありません。その現象として、小は子供たちに陰湿な「いじめ」が蔓延り、それに狼狽するだけで解決できない大人の無能ぶりから、大は、観念的神学論に明け暮れる憲法改正論議や公務員の不正を恥ともしない規律の堕落、また独立国として主権侵害や内政干渉など体面を傷つけられ威厳を保てないような拉致問題、靖国問題、東シナ海の領海問題など政治外交のお粗末さは目を覆うばかりの不甲斐なさです。


 こうした混迷の原因としては諸説あるでしょうが、根本的には現代の日本人が自らを日本人として自覚し、誇れる気持ちを喪失していること。つまり、日本人が自国の歴史を知らないために自らの国とアイデンティティーに自信をもてないこと。それに政治家に「国益とは何か」といった大局観や哲学の不勉強、並びに日本の現状認識の不十分に原因があるのではないでしょうか。
 その社会問題、社会現象を招くものは決して人間が人間である限り避けられないと言った人間の「業」や社会病理ではなく、敗戦を機にアメリカによる「日本弱体化」の占領政策に起因するものだと思います。それは、押し付けの平和憲法であり、見せしめとしての東京裁判であり、自虐史観を強要する戦後教育に代表される一連の施策を出発点とするものでした。そして、日本人の勤勉さ、集団主義、権力に弱いと言う国民性がその効果を助長したのでしょうし、その成果たるや、アメリカの狙い以上だったのかもしれません。
 しかし、現在の混迷をアメリカにばかり責任を負わせるわけにはいかないでしょう。そこには、日本人の民族としての欠点や弱さがあったはずであり、それを冷静に見つめ反省をすることをやらねばならなかったはずなのですが、敗戦のショックと戦前の体制に対する反感アレルギーは予想以上であり、何より拒否反応が先に立つという経過をたどったのでしょう。ここにも、同じ敗戦国でもドイツとの国民性の違いがあるように思います。
 研修の車中で提言を述べられた吉田理事長が強調されたことは、「日本が尊厳ある国家として再生するためには、国益を見据えた国家防衛や外交といった安全保障と同時に、教育の再生がぜひひつようである。」ということでした。私は、この理事長の主張は真っ当なものであると思います。近代国家では、経済の困窮が原因で滅びた国はないでしょう。しかし、安全保障の傘が破れて滅びた国家は古代からたくさんあります。同時に日本を慈しむ心を育むのは文化と伝統である。それを正しく伝えるのは教育です。そこから誇りや知性、落ち着きも生まれるはずです。しかし、今の日本の教育はおかしいと言わざるを得ません。その意味から私も教育再生には賛同するものです。しかも、戦前を語れる人がだんだんと少なくなり歴史の断絶も考えられる状況に鑑みると教育の再生は急務、それも待ったなしの急務であろうと思います。その点では、安倍晋三さんの失脚は大変くやまれることでした。
 現在の好ましからざる社会問題は、何れも教育の問題に収斂すると言えます。私も戦後生まれで、戦後の日教組教育を受けて育ちましたが、その教育を振り返ってみると一貫して教えられたのが、「個人の尊厳」、「個性を主張する」ということであり、それが民主的なのだということでした。そして、戦後の教育を受けて育った世代が3世代にわたろうとする今日、協調性、謙虚さ、道徳など古臭いアナクロリズムとされ、場所をわきまえない自己主張や、我が儘を個性だとはきちがえる品位に欠ける人間が多いのは、誰の目にも明らかでしょう。こんな国民では、世界から軽蔑とあざけりを受けるだけです。
 一方、教師たちの口から語られなかったことは、「日本という国を愛せ」ということと日本近代史のなかで生きた日本人の心意気です。特に、愛国心というのは人間の自然の感情としてより、日本を戦争へと導いた元凶という感じのニュアンスで伝えられたように思います。どこの国でも、自らの国に誇りを持て、国を守るために戦い、犠牲となった人を敬えと教えられるのと正反対の教育でした。
 さて、教育の再生を考える時、それはかなりの困難を覚悟しないといけないでしょう。戦後64年という歳月は、戦後の教育を定着させるには十分な時間でした。今の教育は変だと思うより、教えられることが事実として無抵抗に受け入れる心理的環境、流れが出来上がっているのではないでしょうか。となれば大勢の赴くところ、ストップがかけられないという国民性が教育再生への障害となる可能性もあるということになろうかと思います。もうひとつ見逃せない要素、それがマスコミという存在でしょう。このマスコミの及ぼす影響は、理事長のご指摘にもあるように、決して無視できません。意識、行動、世論形成とその影響は計り知れず、その力は影響どころか洗脳、刷り込みといってもいいと思います。そのマスコミが反体制を自らの存在価値と位置づけその姿勢に徹する限り、教育再生は不可能かもしれません。このように、必ずしも好条件が揃っていないのが現状のなかでは、断固とした決意と気概が求められます。「人権」と「民主的」を絶対的なものとして尊重しつつやる再生など先ず無理でしょう。人は誰しも、地域や社会そして国家といった共同体の一員であること、「公益」の前には「私益」は拒否されるという原則を貫くことが大事でしょう。こうした精神を有する自衛隊経験者を優先的に教職につけるとか、あるいは、教職希望者は体験入隊を義務づけるなどの施策も考えていいと思います。
 長年続いているいじめ、校内暴力などについては、「我慢する力がない」「コミュニケーションがうまく取れない」「少子化で大事に育てられている」等々識者の間では、意見が述べられていますが、それらは全部正解でしょう。そこから、描き出される子供の姿は、「怖いもの知らず」「躾を受けていない小さな野獣」です。そんな子供たちに「世の中には怖いものがある」「かなわない」ということを心に叩き込む強制的なことも必要です。果たして、それが民主的に人権を尊重して諭し言い聞かせることで効果があがるのでしょうか。「躾は押し付けから始まる」というのは真理だと思います。そして、それは日教組にできるでしょうか。日教組は、知性を与え育むのをその職とする人間の集団です。ならば、この教育の混乱と荒廃の責任の一端は自らが負うものだという知性的判断を持たねばなりません。
 次に、安全保障についてですが、40年前イザヤ・ペンダサンが「日本人とユダヤ人」のなかで「日本人は水と安全はタダだと思っている。」と述べましたが、それは今でも恐らく変わっていないでしょう。現在の日本は商人国家であり、朝から晩まで経済の話題があふれるように流れます。経済的成功が唯一無二の価値とされ、経済的繁栄こそが究極の姿とされており、少しでも経済力にかげりが見えることを何より恐れおののくようになっています。GDPがまもなく世界第三位に後退するなどその典型でしょう。しかし、世界には、イギリス、ドイツ、スウェーデンなどGDPは日本より小規模でも存在感のある国があります。それらの国は、決して自信のないそぶりは見せません。それを可能にしているのは軍事というものもしっかりと見据えた安全保障政策です。
 経済的繁栄は、安全保障がきちんと働いていての賜物だということは古今東西に通じる真理です。その観点から見て、民主党の安全保障能力は信頼できるものでしょうか。民主党の安全保障と外交施策には現在のところ見るべきものがありません。打ち出す施策は内政面での短期的なことばかりです。長期的な政戦略構想が全くありません。国家戦略室など名ばかりです。
 現実的に見たら、日米同盟の更なる強化の妥当性は、元サウジアラビア大使の岡部久彦さんが数ある著作で力説されていますが、鳩山首相、岡田外相ともに「日米同盟を基軸として」と言いつつ、本当にそう思っているのかと疑うようなことをやっています。それが、理事長もご指摘されている米軍再編に伴う普天間基地の問題です。これは、右手で握手しながら左手では相手の頬をひっぱたくのと同じことですから、アメリカが猜疑心を抱くのも当然でしょう。防衛大臣の北澤さんに至っては、この問題に対して右往左往するばかりの醜態をさらしています。防衛省としての度量があるのでしょうか。彼は、田母神前空幕長が喚問された時、発言を遮った事実から見て、その任にあらずと思います。今の民主党には政権のみが見えて国家が見えていないのではないでしょうか。小室直樹さんが「危機の構造」の中で、政治家を我々より全てに秀でた者という「王権神授説」で見るなと警告していますが、その通りでしょう。民主党政権のもとでは、領土、領海問題など外交は危ういのではないかと思います。
 一日も早い政権交代を望む次第ですが本当に望ましいのは、安全保障を基軸とした政界再編成でしょう。なかでも軍事面での国防構想、展望を語れる政治が不可欠です。なぜなら、戦後一貫して日本は軍事について真剣に正面から取り組んできませんでした。軍事は、「必要悪」という目で見ていましたが、現況の国際情勢を見る時、その浅慮のつけをしっかりと自覚すべきです。日本は日米同盟のおかげでその独立を保っています。アメリカとの同盟を強化しつつも自らを見失わないこと、換言すれば政治体制上は従属しても心まで隷属してはならないのです。キッシンジャーがある番組で「たとえ同盟国でも、すべてを信じ任せるなどということはない。もしそんな国があるとしたら驚きである」と述べていましたが、日本はその驚きの国です。
 今の日本に求められているものは、明治の政治家や軍人たちの国と国民に対する愛情と信念ではないでしょうか。

平成21年12月8日 守山善継

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この記事へのコメント

  1. 伝次郎 より:

    はじめまして。
    今こそ、脱米・自衛隊(国軍として)の強化が必要だと思います。多くは戦前の軍隊を洗脳により悪と思わされていると思います。
    あとこちらも
    民主は日本の政党ではない、と断定したほうが手遅れにならない為にもいいのでは?
    ブログ アジアの真実
    ・事業仕分のサハリン韓国人支援事業がなぜか満額復活 ~またもや明らかになった民主党政権の闇~
    日本は中韓のATMか!!

  2. 日下部晃志 より:

    >伝次郎さま
     コメントありがとうございます。
    >今こそ、脱米・自衛隊(国軍として)の強化が必要だと思います。多くは戦前の軍隊を洗脳により悪と思わされていると思います。
     「自衛隊の国軍化」が必要であることには、全面的に同意いたします。
     いわゆる「保守派」の政治家やオピニオンリーダーと言われる人達は「憲法(特に9条)改正を!」と主張されています。これも必要なのですが、もう一歩論を進めて、「武」というものの本質を突き詰めた議論が必要なのだろうなと個人的には考えております。
     第一には、「文」と「武」は互いに補足し合って一つの全体をなす、ということです。非常に処する力を「武」と捉え、古来より「尚武(武をとうとぶ)国家」「文武両道国家」であったわが国の来歴からすれば、現在の姿こそバランスを欠いた姿といえます。
     第二には、「武」というものを認めるか否かという問題ではなく、人間の「精神」の問題として捉える、ということです。山鹿素行の言葉を借ります。
    「後世の学者・・・・、武を以て覇者の業とすること皆、不知愚蒙の説なり。その故は兵に王覇の差別あらず、王者これを用ふれば王者の兵となり、覇者これを用ふれば覇者の兵となる也。・・・・ただその用ふる人に従つてその用をなす。故に武に王覇の別なきなり。文も亦然り。尭舜もこの文を用ひ、桀紂もこの文を用ひて、興亡治乱は其の人にあること也」
     
    「武力をもつと戦争(侵略)に繋がる」という論が後を絶ちませんが、これなどは日本人は「覇者」にしかなれぬという、自分たちへの徹底した不信感から発する発想であり、「精神」の出番を封じてしまおうとする貧困な発想です。なぜ、私たち日本人は「武」を見事コントロールできる精神を持つ「王者」だと考えられぬのでしょうか。なぜ、「武」を見事コントロールできる精神を育てていこう、と考えられないのか・・・
     くどくなりましたが、「武」というものの本質(必要性を越えたところ)を何らかの形で伝え続けていくところに、郷友連盟の使命の一端があろうかと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
    理事・日下部晃志

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