尖閣諸島領海侵犯事件について


福岡県郷友連盟
会員 守山 善継

今回の尖閣諸島領海侵犯事件における政府処置について、誠に赤恥をかくことは承知の上で、一国民から見て今回の事件がどのように映るのか、投書させて頂きます。
1 尖閣諸島が領土問題として俎上に上がるのは、歴代政権と外務省の罪
そもそも、マスコミ等での報道によると、尖閣諸島のその領有宣言に当たって、日本は尖閣諸島が何処にも帰属しないことを確認した上で行っており、手続きとしては完璧であり、非の打ち所がないものです。また、シナ大陸の政権が中華民国、中華人民共和国の2国家の下でも尖閣諸島は日本の領有下にあると認めた文書が存在することが確認されています。
それが、1960年代に国連から海底油田等の海底資源が眠る可能性大という調査結果が出たとたん中華民国(台湾)も中華人民共和国も一斉に自国の領土という主張を始めた次第ですが、鄧小平の「不了了之」という提案にのり、その術中に見事に絡め取られた当時の自民党政権と外務省に責任があるといえます。鄧小平の提案を呑んだという事は領土問題があると認めさせられたことであり、中国にとって見たら、日本の領土に確固と楔を打ち込んだことになり、その野心、野望の足掛かりを築いたことであり、外交的には中国の勝利であり、日本は無用の国際問題をその政治的怠慢と軍事的非力により抱えさせられたことになります。
その禍根が今日、政治問題として災いしているのだと言えるでしょう。
2 中国の対応は戦時下の対応である。
中国漁船船長の逮捕、拘留に対し中国が採った対応は、温家宝自らが国連の場で船長の即時無条件釈放要求であり、日本への一方的な責任の押し付けを中国政府が表明したことであり、日本の対応次第では、更なる強行且つ重大な手段を執るという報復宣言であり、レアアースの輸出禁止や税関での検査の強化は日本に対する経済制裁の手段であり、民間人を因縁めいた理由での逮捕は人質としての報復処置であり、これらを総合してみると中国は戦時体制を採っていると言っても良いでしょう。
3 責任転嫁の民主党政権、中国の強圧に屈した菅内閣、そして事件の本質のすり替え
今回、事件の展開は日本側が中国漁船船長を処分保留のまま那覇地検の判断により釈放したのですが、その判断理由の一つに「日中関係を配慮すると」と言うことを上げました。民主党は国内法に則って粛々と対処するという正論を言っていたのですから、何らかの処罰があると誰しもが思っていたにも関わらず、結局は中国の脅迫に屈したという印象を良識ある国民や国際社会に与えたことは否定できません。菅内閣の言い分は、今回の事件は領海侵犯等の刑事事件であり、沖縄地方検察庁がしっかりと国内法に照らし合わせた審査に基づいて下した判断であり、国内法に則って粛々と対処したのだから政府は之を了として尊重するし、検察に対し指揮権といった政治的圧力は一切加えていないというものでしたが、このような詭弁は誰も信じる人はいないでしょう。その釈放のタイミング、検察の越権行為とも思えるコメントの内容や民間人の人質拘束などから明らかに中国への何らかの配慮が働いていたはずだと国民は思っているでしょう。また、防衛外交委員会では、日本政府より那覇検察が主責任者と見なされるような議論となり、船長釈放の妥当性や是非に議論が収斂して、検察の法的判断の根拠や合法性についての法的技術論に追求が進んでいるようですが、それでは本質を突いた問題の把握にはならないと思います。仮に、中国政府が、何ら日本政府に対し抗議や要求をしなかったのなら、検察が担当する純粋の刑事事件であり、その処置は国内法に則ってという法論理で対処するのが正当だと言えたでしょう。しかし、この事件の本質は、日本がどこの国の干渉も受けることなく独自に対処して当然の問題を中国が日本の主権に干渉し、脅迫や報復処置に出た事、つまりは主権侵害であるというのが本質です。その主権侵害に対し主権者であると日本政府は明確に通告できず、外交的には何らその干渉を排除できなかったというのが一番問題にされるべきことではないでしょうか。その排除できなかった処置が釈放であり、それを法的に則った処置という論理のすり替えで国民を厚顔にも欺瞞しようとしています。民主党政権は本質的糾弾の矛先を必死になって逸らそうとし、国の生存の条件に直結する安全保障や、国の威信、そして国家主権の観点からこの事件を捉えようとしないのです。
4 今回の事件を正しく把握分析するのに自衛隊関係者(内局ではない制服組)が登場しない不思議
どのマスコミにも、今回の事件に自衛隊関係者のコメントを求めたものはありません。尖閣諸島を巡る情勢は、経済的な要因より軍事的な要因の比重が明らかに大きくなっているにも拘わらず、自衛隊関係者の見解を聞く事がないというのは不可解です。外交と軍事は補完関係ではなく車の両輪であろうと思いますが、政治家が自衛隊関係者からレクチャーを受けたという報道はありません。軍事の理解には自衛隊関係者の関与が欠かせない筈です。我々が物理学者の話を聞いても理解しにくいように、軍事の話は素人には解りにくい筈です。その点、日本の政治家は、謙虚さが足りないのではないでしょうか。政治家だから、シビリアンコントロールが効いているからといって政治家は軍事を理解しているというのは思い上がりです。その証拠に、アメリカをご覧になったら一目瞭然でしょう。
大統領のアドバイザーとして統合参謀長なり軍の高官が控えているではないですか。政治家に、軍事情勢や軍事的な視点からの展開予測はできない筈です。日本の代議士に軍事的に造詣の深い人は多くない筈です。蛇足ながら、日本には、アメリカやイギリスと違いテレビで専門家の話をじっくり聞く番組は「日高義樹のワシントンレポート」以外には殆どありません。これでは日本人と米英人の教養の蓄積に差が出ることは否めないでしょう。その中でも、軍事的な教養の貧弱さは歴然としていると思います。
5 国民感情としての怒りではなく、健全な常識を持った国民の怒りとして抗議表明をするべき
今回の事件は、中国への怒りや不愉快さといった単純な感情的なものとして終わらせてはいけないと思います。感情的な怒りはマスコミの報道の減少とともに沈静化するのでしょうし、「熱しやすく、冷めやすい」健忘症の国民性と、「水に流す」淡白さが何時の間にか事件を記憶から消してしまうからです。
この機に我々が示す怒りは、ひとつに中国の道理の通らない傍若無人の振る舞いと、吉田理事長が常に主張されている国際信義に悖るその行為の数々についてでしょう。そして二つには、それを跳ね返す意志を示さない日本政府の不甲斐なき姿勢についてでしょう。正々堂々とした反論や態度ができない政府は、日本の生存の条件を危うくするという冷静な怒りを示すことです。
因みに、私の勤務する会社の18歳の小娘たちの言葉に正鵠を射たものがあります。「こんなことしたら日本は中国の部下と思われるじゃない。」恐らく家来という意味を部下と言ったのだと思いますが、世界中の人々も同じことを思っているでしょう。
6 今回の事件から得られる教訓
先ず第一に、中国は中華思想から一歩も脱却しない国であると再認識することでしょう。常に、自己の都合、自己の利益、自己の主張が最優先であり、日本人や古代中国の思想家たちが説く「信義」「礼節」の観念は欠片もないということを再認識すべきでしょう。中国の信義はその時のご都合主義により何時でも内容が変わるのだということです。中国に善意は通じないということにそろそろ気がつくべきです。
第二に、軍事力の強化を真剣に検討する時期であると言えるでしょう。交渉の裏付けとしての軍事力です。平和主義や友愛精神、そして経済援助のソフトパワーでは将来が危ういということを実感させられたのが今回の事件です。憲法の改正、国力に合わせた軍事力の整備に踏み切らないと日本は何時までもつけ込まれるのだということがハッキリと解りました。今まで軍事力は放って置いたことを反省し、軍事力イコール戦争への道という短絡思考から脱却する時期です。
第三に、経済至上主義、利益至上主義で国家観の無いままに経済活動を拡大し、経済立国を国家の方針とするなら、このような事件は将来に何度でも起こりうると覚悟すべきです。そこには犠牲者も出るでしょう。戦後の日本を再興した大きな功績が経済人にはありますが、だからと言って経済人への過信と過度の意見尊重は厳禁であり、経済人が国の舵取りをするといったことは絶対にいけません。故井上成美大将の筆法をもって言えば「商人は商人だけの頭しかない」のであり、故小林一三が「日本に戦艦陸奥や長門がなかったら果たしてこんなに商売ができただろうか」と述べたこと、「商売の目的は、畢竟、国を富ませるにある」と述べた故渋沢栄一ほどの度量と哲学のある経済人は如何ほどいるのでしょうか。極めて怪しいものです。
以上が一般的な国民の素朴な気持ちではないでしょうか。条約的にとか、法論理的にはとか言った専門的な解釈や技術的な判断は官僚の専管事項であり、一般の国民には立ち入れぬものです。我々国民は、その専門的な解釈より「それは筋が通っているかどうか」の健全な常識の観点から見ているのです。
最後に、今回の事件について個人的な所感を2点述べさせていただきます。
今回の事件に関して「日米同盟の正体」という名著を記された孫崎亨氏は、1960年代以降の事態を基点として日中間の主張の遣り取りで、その差異を生じるメカニズムを解説されました。しかし、本来は惹起しなくても良い差異を生じせしめた歴代政権と外務省の罪と反省については言及されませんでした。ここに私たちは官僚の無謬性を見ます。この無謬性の蓄積が日本を弱体化させると喝破された前田母神空幕長が正しいということです。
また、今度の事件では、仙石官房長官と菅首相には日本は大国であるという自覚が完全に欠落していました。日本は世界からは大国としての役割と責任を求められている筈です。特に、中国人の南下現象を深刻な国内問題として抱える東南アジアやオーストラリア、ニュージーランドからはそうでしょう。しかし、政権中枢の御両人は一国平和主義の考えはあっても、世界の中の日本という感覚がないことを露呈したのです。
我々は、次回の選挙ではコスモポリタニズムやリベラリズムで安全保障を捉えようとする政治家を選んではいけないと思います。今回の事件で、一人でも多くの国民に目覚めて貰いたいものです。その国民へ目覚めの啓蒙活動は郷友連盟の大事な使命だと期待致します。

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この記事へのコメント

  1. ねむ太 より:

    こんばんは。
    日本人は、いつからこんなに精神的に弱くなったのか。
    尖閣諸島問題に於ける菅政権の対応は、女の腐ったの、と言われても仕方あるまい。
    法に基づいて処断しても殺されるわけでもあるまい。
    思えば、戦艦大和が沈み、連合艦隊も潰えたかと思われた、大東亜戦争末期、駆逐艦神風(艦長 春日均中佐)は、シンガポールを根拠地にタンカー、輸送船の護衛にただ一隻で終戦まで戦い抜かれ、日本と日本海軍の名誉を守りぬかれました。
    此の様な方々を偲ぶとき、特に民主党の者たちには、自分は日本人だなどと言って欲しくありません。
    と、云うより資格がありません。

  2. 管理人 より:

    ねむ太さん、早速のコメントありがとうございます。
    戦前に戻ることは叶いませんが、政府としてしっかりと情報に基づいて日本の国益優先で舵取りできる政府が出現してもらいたいと思います。

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